連載2「特別養護老人ホームこはく苑はこうして生まれ変わった」和泉逸平

《前回より続く》前回はこちらをクリック

 

3.課題解決はまず政策や事例に学ぶ

 

介護業界のサービス量不足は国としても多きな課題として捉えられており、多方面から多様なサポート策が提供されています。

 

 

図1-5第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和3年7月9日厚生労働省)より

 

平成28年(2016年)4月に厚生労働省で実施された「介護のシゴト 魅力向上懇談会」で整理された内容は、6年経った今も変わらず取り組んでいかないといけない項目が網羅されています。ここでの「業務の生産性と効率性の向上」「資質向上・キャリアアップの実現と専門性の確保」「利用者本位の仕事観」の一体的な推進が思考のベースになっています。

 

 

図1-6介護のシゴト魅力向上懇談会議論の整理

 

今回の改善活動は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度 「ロボット介護機器開発・標準化事業(開発補助事業)の実証事業としての実施を想定していましたので、独自の方法で行うのではなく、厚生労働省老健局が発行している「業務改善の手引き」に沿って実施していきました。

 

 

図1-7 業務改善の手引きより

 

この課題把握シートから集計し、30%以上のスタッフが「していないと」回答した項目は以下の通りです。

 

項目 課題把握の視点
施設・事業所の理念・基本方針を踏まえた事業計画の実施状況について、一定期間の後、振り返り、計画しているか
職員の業務改善活動(ICT機器・ロボットの活用等)を継続的に推進するために、施設・事業所内の職員向け研修の年間計画に盛り込み、計画的に実施しているか
施設・事業所内の業務量と職員の稼働状況を考慮した上で、適切な人員配置・シフトを検討しているか
職員が休憩を十分確保することや、職員の残業時間を促進することを意識したマネジメントをしているか
11 送迎ルート、訪問ルートの作成に時間をかけない対策(自動ソフトの活用など)があるか
17 職員が他のスタッフを探すことに時間をかけない対策(職員の配置の見える化・インカムの活用など)を行っているか
19 外部の事業所・帰還(居宅介護事業所・他介護サービス事業所等)と利用者に関する情報共有スムーズにするための仕組み(システムの活用・様式の共有など)があり、有効に活用しているか
27 職員によるサービスの提供方法・内容にバラつきが生じることなく、提供する工夫(手順の明文化など)があるか
28 必要なタイミングで、すぐに職員とコミュニケーションを取ることができており、サービスの問題や課題について適切な伝え方で伝達するための対策があるか

 

表1-2.業務改善の手引きより

 

この中から、とくに8.施設・事業所内の業務量と職員の稼働状況を考慮した上で、適切な人員配置・シフトを検討しているか、27.職員によるサービスの提供方法・内容にバラつきが生じることなく、提供する工夫(手順の明文化など)があるかの2点に絞り、スタッフとの同意を得て、改善活動を始めました。

 

 

【参考】

介護人材確保に向けた取り組み、介護分野における生産性向上、科学的介護、介護ロボットの開発普及の促進、介護現場におけるICTの利用促進、ハラスメント対策、介護サービス事業者の業務管理体制、BCPについてなど、有益な情報がまとまっていますので、まずは参考にして頂きたいと思います。

 

《続く》→こちらをクリック

2022.04.07